持っている服を蘇らせる魔法の意味づけ〜色が心理に与える影響「黒」バージョン〜

色彩心理学の仕事をしていると、ときどき「黒い服は着ちゃダメですか?」と聞かれることがあります。
色に興味のある方はすでにインターネットで色について調べていたり、色のことが書かれた本を読んでいらっしゃる方も多いので、その影響かな?と思います。
色にまつわる本の中で「黒は光を通さない色なので着るのはよくない」とハッキリと書かれたものを目にしたことがありますが、着ちゃいけない服の色があったのは遥か昔の話。
江戸時代には庶民は贅沢を禁じられ、着用する服の色も制限されていましたが、現代は働き方も自由な時代。
ファッションも自由に楽しんでゆきましょう。

ヨウジヤマモトこと、デザイナーの山本耀司さんは1972年に『Y’s』を設立しましたが、世界デビューは1981年、パリコレクション。
当時のヨーロッパのコレクションの常識を覆した世界デビューは酷評から始まることとなります。
コムデギャルソンの川久保礼さんと「黒」を全面的に押し出し、アシンメトリーのシルエットや、ボロボロに見えるような穴の空いたものを発表し『黒の衝撃』と報道され波紋を呼びました。

山本耀司さんはパリデビューにあたり、着物の柄など日本人デザイナーが打ち出しやすい要素をすべて排除すると決めて挑んだとおっしゃっています。
日本人デザイナーとしてではなく、ひとりのデザイナーとして「黒」という当時のタブーに真っ向から向き合ったことで、革新を起こしたのです。

「黒」の意味には、反骨精神・クール・自信といった意味があります。
パリデビュー当時の山本耀司さんが日本人らしさをあえて出さない選択をした精神は「黒」の持つ意味そのものではないでしょうか。
また、「黒」には、上質・都会的・洗練されたという意味があったり“プロフェッショナル”なんて意味もあるくらいなので、世界的なムーブメントとなって今なお人気を博しているヨウジヤマモトブランドの世界観とも共通する“洗練された本物感”を感じてなりません。

「黒」は喪服の色であり影の色。死や黒歴史、暗黒時代などといったマイナスな印象もあるかもしれませんが、上記に挙げた通り、数々の魅力的なキーワードがあるのも確かです。
「黒」には革命を起こしプロフェッショナルに活躍し続ける、そんなオーラがあることを覚えておくと、黒い服を着ているときに沸々と自信がみなぎってくるかもしれません。

色にはたくさんの意味があるので、自分の心がポジティブに反応するキーワードを選んで、ファッションにしてもインテリアにしてもその意味を意識してみると楽しさは倍増することと思います。
色の意味を加えることで、たとえ衝動買いしてしまった服でも、あるいは何となく買った服でも、その服を蘇らせることができるのです。
無難な色として着用する方もいらっしゃるかもしれない黒い服も、意味づけ次第で生活に彩りを感じ、心に潤いを与えることもできるので、日々意識してみることをお勧めしたいと思います。

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