本気の「知る」とは?心に光を当てる『黄色』の色彩心理学

医学博士で解剖学者である養老孟司さんの「知る」という概念について、とても興味深い説明があります。
ガンの告知をされ、治療法もない。あと半年の命だと言われたら、あそこに咲いている桜が違って見えるだろう、という内容です。

去年までの桜をどういう想いで見ていたか思い出せなくとも、今、桜の花は違って見えるということは、自分が変わっているということ。
桜は変わっていないのです。
自分が変わったに過ぎない、それを「知る」ことに擬えて伝えていらっしゃいます。

確かに、余命宣告をされれば、桜に限らず、見渡すものすべてが宣告前とは違ったように映り、違うものになることでしょう。それらの持つ造形の情報がガラリと変わるであろうことは想像に難くありません。

本気の「知る」とはガン告知だと、そんな考えを教えてもらうと、知ることの重要性を痛感します。
「知る」ことは、それくらい変わるということ。
表面的に知ることは、知った気になるだけであって自分事にはなっていないため、自分の血や肉にはなりにくい、しかし、本気で知ることによって、自分のものになる。そう思うと「知る」ということは、自分に大きな影響を与え、多くのことを考えたり感じたり、迷ったり怖かったり、嬉しかったり感動したりと様々な感情をもたらす行為と言えそうです。

色でいえば、黄色には、「知る」と「個性」という意味があります。

本気で知ったことは自分の血となり肉となる、自分らしさや自分の強み、自分のエネルギーや生きる目的にもなる、それを個性と捉えると、黄色の意味の「知る」と「個性」を併せて見ていくことで、“色の意味”の面白さや奥深さを感じていただけることと思います。

何事も自分事として考えることで、本当に理解できるもので、そして、自分事に考えたとき、見え方さえ変わるということも理解しておくと、目の前にある物でも人でも出来事でも、受け取るものの大きさが変わってくると思います。
黄色には「明晰性」という意味もありますので、明晰に事象を捉えると、起こっているすべてのことに様々な意味を見出し、自分の人生にプラスしていけるのではないでしょうか。

今、目の前に何がありますか?
誰かがいますか?
時計が動いていますか?
飲み物や食べ物がありますか?

これらの中から一つ選んで、グッと見つめてみてはどうでしょうか?

誰かだとしたら、その人は何をしているのか、いま自分にどんな影響を与えているのか。
時計だとしたら、時を刻むことについて今一度真剣に考えてみてもいいかもしれず、飲食に関わるものなら、それを口にしたときの味覚、体の感覚や心で感じることに積極的に意識を向けてみるなど、本気で「知る」ということを意識して、自分事に感じてみると、そこから得られるもの・吸収できること・自分らしさに繋がることが発見できるかもしれません。

ちなみに、わたしの前には、いま紅茶があります。大好きなアールグレイの温かい紅茶。

思い返せば、世界堂で働いていた頃、その日、ポップを描いたりして楽しくも疲れながら退勤し、新宿通りの人をかき分けつつ、たまたま母と電話で話しながら新宿駅に向かうと「美味しいものでも食べて疲れをとってから帰ったほうがいいよ」と言ってくれたので、そうしよう!と、その足でカフェへ。そこで飲んだアールグレイの香りと温もりに疲れが瞬く間に吹き飛んでゆくのを感じました。それからというもの、カフェ好き・紅茶好きになったのです。

そして、いま目の前に注がれた紅茶を見て、自分にとっての紅茶は疲れを取り去ってくれる強い味方なのだと、紅茶の大切さを実感させられます。目の前にあるものは既に自分にとって大切な意味を持っていることをあらためて「知る」ということもできるのだと、しみじみ思う次第です。
紅茶から自分事としての「知る」を実感したことで、疲れる前にティーブレイクをとろう、とか、気分を変えたいときに紅茶をいただこう、と、セルフメンテナンスにも欠かせない、自分にとって大切なものが目の前にあることに喜びさえ感じられてきます。

是非、自分事として「知る」ことをいま、目の前のことから、あらためて見つめてみませんか?

そして、黄色には「知る」「個性」「明晰性」のほかに、「好奇心」「学ぶ」「楽しい」「喜び」「面白い」「笑う」「混乱する」「不安」「緊張」といった意味もあります。
一見わかりにくいかもしれませんが、これらすべて、互いに関連し合っています。語彙としては違っていても黄色の意味として、出処が黄色というところで必ず関連しているのです。

最初にお伝えしました、養老孟司さんの「知る」ことはガン告知のようなもの、と考えれば、混乱や不安なども、自分が感じ変わりゆく過程の中で生じないわけがありません。右往左往しながらも「知る」ことで変容をもたらし、どんな状況においても最後まで自分らしく生きることを諦めず、“生きる喜び”を実感できる。不安があるから抜け出すために学んだり、笑いを求めたり、本当に楽しいことに出会えることもあります。

「知る」ことは、自分らしい底力を見つけるキッカケになったり、自分にとって大切なもの・こと・ひとがわかったり、自分らしく生き抜くヒントを教えてくれるものと言えそうです。

黄色は、色の中でも最も明るい可視光の波長を持つ色です。自分にスポットライトを当てる色、自分の心に光を当てる色、自分の進む道に光を照らす色です。
もしも、自分のことがわからなくなったり、心が疲れてしまったり、人生という道に疲れてしまったら、黄色い蛍光ペンで大切なところをマーキングする(ラインを引く)ように、目の前に見えることを明晰に見つめ、光を当てるようにチェックしてみると、明るい気持ちに繋がる何かが見えてくるかもしれません。

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